白人が黒人の音楽であるR&BやSoulを歌う”Blue-Eyed Soul”。中でも時代を担うシンガー・ソングライターとして注目されるのが、LAを拠点に活動するMayer Hawthorne(メイヤー・ホーソーン)。
ひょろっとした黒縁メガネという出で立ちには「ナード」という形容詞がぴったり。
日本ではFunkユニットの『Tuxedo』のボーカルという印象がより強いかもしれない。
Mayer Hawthorneは特に70年代のSoulに敬意を表しているのだけど、彼の曲にはどこかアダルティな脱力感がある。
もっとも初期は本人もぽっちゃりとしていて、何となくかわいらしい楽曲が多かったのだけど、3作目のアルバムあたりから急にダークな雰囲気が出てきた。
中でも一際都会的なのが、ラッパーのKendrick Lamarをフィーチャーした『Crime』。
Mayer HawthorneはDJとしても活動している。
日本でもちょくちょく話題になるクラブの騒音問題。本人いわく、自身も参加していたDJパーティが警察沙汰になったことがあって、この曲はそんな騒動に対して作ったのだそう。
歌詞の内容は<僕らはただPartyをしたいだけ 誰も傷つけるつもりなんてない>それなのに犯罪なのか?といったところ。
曲は始まりのその瞬間から不穏な音を鳴らす。浮遊感のあるトラックに乗ったBメロからサビに入ると、彼特有のファルセットが響く。
この人は決して往年のソウルシンガーのような太い歌唱をするわけではないのだけど、跳躍のある裏声を当てることには非常に長けている。
2番のサビが終わると、そのままKendrick Lamarのラップになだれこむ。
ラップはけっこう長く、Aメロ・Bメロ分の尺がとってある。Bメロのトラックに乗せてまくし立てるようにMCが入るあたりは最高にクール。
さて、MVの内容にも簡単に触れてみたい。
上述の通り、パーティの機会を奪われたことから端を発したこの曲。映像はパーティの招待状を受け取り、身支度を整えるところから始まっている。
何だかキメちゃっているようなオバチャンが運転するトラックに乗って目的地に向かうも、一向につかない。
挙句の果てにはパラグライダーやらボートやらで移動させられる始末。
そうやってやっとたどり着いた会場はすでに宴のあと?それとも、まだ始まってすらいない?
ここは街から遠く離れていて、誰にも迷惑をかけないような場所にも見える。
我々の楽しむべきパーティはどこにある、という権力へのメッセージを感じる。まぁ、近所迷惑はよくないけど。