オーストラリア・モーニントン半島出身の若手シンガー・ソングライター、Tones and I。
曲作り、ビジュアル、声、とあらゆる面で独特の存在感を放つ新星である。
2019年3月にシングル『Johnny Run Away』でレコードデビュー後、続く5月に2番目のシングルとしてこの『Dance Monkey』を発表。
瞬く間に世界を席巻し、母国オーストラリアを含む30か国のチャートで1位を記録した。
16歳ごろから自作の曲をYouTubeにアップし始めたらしい。やがて本島に渡り、「Busking」と呼ばれるストリートパフォーマンスで生計を立てるようになる。
2018年に「Buskers by the Creek」というBusking音楽フェスで優勝すると、音楽事務所と専属契約を結ぶに至った。そしてファースト・シングルの発表である。
経歴だけ読むと、路上から華々しいスターダムを駆け上がった女性、というイメージを抱きがちである。
しかしまぁ、彼女を見ているとシンデレラガールとして売っていくつもりはないようだ。
芸人根性丸出しの体当たりパフォーマンスを披露しているし、歌声はまるでマンガである。
歌詞の内容もなかなか尖っている。
ストリートパフォーマンスを披露していると、通りすがりの人々が当然のように「今のスゲェ、もう一回やってよ」とせがんでくる。
私、もうずっとサルみたいに踊り続けてんのに、アンタのためにまたやんなきゃいけないわけ?
人を喜ばせてナンボの芸能人が、あまりにもハッキリ、しかも嫌味っぽく本音を吐露しているのである。
テレビゲームに慣れすぎた世代が、完全に他者を殺めたり、自分の人生を「リセット」したりする、などと言われたのが少し前。
今、デジタルなものに慣れすぎた人々は、一過性のものや対価を払うことの意義を忘れかけている。そんな現状への警句でもあるのだ。
何というか、(主に米国発の)メインストリームに中指を立てている層なんかに刺さりそうなのが非常によく分かる。
そして個人的に、最も注目に値すると思っているのが彼女のビジュアル。
なぜかポップ界においては、歌手もモデル並みの体型を求められることが多い。その中にあって、Tones and Iはありていに言うと「ふくよか」である。
芸人的と言えばそれまでだが、本来曲を作り歌う者も芸人であるというのは、至極当然のこと。
彼女の存在は、現在の矯正された潮流へのアンチテーゼとなり得るだろうか。
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