なんつー難しいビート感をポップスに持ち込んでしまったのか、という感じであるが、ベースにあるのはメキシコのフォルクローレ「コリード」である。
軽やかなダンスミュージックで、結婚式などでは現在でも広く踊られている。
一方、2010年代の後半あたりから、新世代のラッパーたちの間で「トラップ」が大流行しはじめる。
この新たなHip-Hopスタイルは瞬く間に世界を席巻し、もちろんメキシコも例外ではなかった。
ただ、メキシコの変態的な部分がここで現れる。一部のラッパーがこの最新の表現をフォークミュージックにぶち込んでしまったのである。
そのうちの一人がNatanael Canoである。2001年、「太陽の街」ソノラ州エルモシージョに生まれた。
コリード×トラップという新しいジャンルは、そのまま「トラップ・コリード」と呼ばれるようになった。
ただし、メキシコの一定より上の世代からはめちゃくちゃ評判が悪い。美しい伝統音楽にHip-Hop特有の「タバコ」だの「女」だのを持ち込むわけだから、ある意味当然といえば当然か。
しかしその伝統を解さない身からすると、何やらとんでもなくカッコいいものに聞こえてしまう。
中でも、当時18歳だったCanoの生み出したこの楽曲の緊張感はものすごい。基本となる6拍子の上につんのめるようなシンコペーションをたたみかけている。
蝶のように舞うギターに言葉を乗せるその姿から感じるのは、天性のリズム感。
そしてこのギターサウンド、とにかく艶っぽい。ラテンの情熱がほとばしる鬼気迫るテクニック。アコースティック楽器の可能性を叩きつけてみせるような音色である。
Dripとは恐らく、2010年代後半にラッパーたちの間で流行したスラングのことだろう。「着飾る」とか「最高にイケてる」ことを言うらしい。
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