Cimafunkは「アフロ・キューバン・ファンク」のシンガー・ソングライター。
キューバという国は、中南米の音楽であるサルサと黒人奴隷にルーツをもつアフロが混在した、独自の音楽文化をもつ。
同じサルサでもメキシコの甘くメランコリックなものとは異なり、土俗的な様相を呈している。
その音楽を幼いころから浴びるようにして五体に染み込ませたキューバ人がファンクをやると、このように濃厚な世界が開けたわけである。
元来、キューバには古くから多様な人種が入り混じっているために、人種による差別が少ないと言われている。
そんな背景もあってか、キューバの民族的な在り方を形容して「スープのようだ」と言われることがある。
それぞれの野菜が独立して存在する「人種のサラダボウル」よりも、それらが溶け合ってさらに混在が進んでいるということだろう。
そのことを踏まえてタイトルのPotaje、つまり「ポタージュ」を見るとなんとも味わい深いのである。
母なる国が生んだそうそうたる音楽家たちをもフィーチャーしている。
まず、メインシンガーの一人として登場するOmara Potuondoは1930年生まれの伝説的な歌手で、現在も精力的にその伸びやかな歌声を届けている。
かの有名なブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブで歌った経験もあるほか、若かりし頃はダンサーとしても活躍していたようだ。
そのOmaraとも深い付き合いのあるChucho Valdésは、ジャズ好きでこの名を知らぬ者はないであろう名ピアニストにして、ラテンジャズ界に多大な影響をもたらした人物。
チック・コリアなどとも交流があるほか、キューバから羽ばたく全ての若きジャズプレイヤーにとっての「父」である。
Pancho Amatは「トレス」という楽器の名手。主に「ソン」というキューバの伝統的な民族音楽に使われ、Panchoの基本スタイルもソンによるものである。
トレスとは3の意味。3つのコースに複弦が張られた六弦の楽器で、見た目はギターやマンドリンに似ている。
そして、Orquesta Aragónは1939年発足の老舗オーケストラ。歌謡ショーなどを彩るポピュラーオーケストラで、世代交代を行いながら今日まで続いてきた。
キューバ音楽史の生き証人と呼んで差し支えないだろう。この国にとっての音楽とは、日本人にとっての歌舞伎などに近い伝統芸能なのだと理解できる。
老若男女、そして音楽ジャンルの垣根を越えて文化のごった煮を楽しめるポタージュの完成である。
You may also like...