シンガー・ソングライター、ダンサー、アーティストとして多様な顔を持ち、そのいずれでも唯一無二の存在感を放つFKA twigs(エフケーエー・ツイッグス)。
デビューアルバム発表後の5年間に、俳優ロバート・パテインソンやシャイア・ラブーフとのロマンスと破局、緊急手術などを経験。
困難を乗り越えてたどり着いた境地を示すようなセカンド・アルバムの名は『Magdalena』という。
中でも特に切なる思いがあふれているのがこの曲であろう。
前半では自身が体験してきた痛みや、薬物を示唆する語句が並ぶ。それが一転、
<SFの中でさえ私ほどのヒーローは現れない>
<マグダラのマリアは彼女を慕う者を決して失望させない>
と、救いを思わせる表現に変わる。同時に、自身を神格化するかのようなフレーズが特異である。
収録アルバムのタイトルに直接言及している点、この楽曲の持つ意味は深いのだろう。
コンテンポラリーなAメロに続く、あまりにも美しいサビ。そのままどこかに連れ去られてしまいそうなハイトーンが脳の奥に響く。
そのサビでは悔恨の念が連ねられている。
<あなたが独りだと知らなかった もし伝えてくれさえいれば あなたと一緒に家にいたのに>
<あの丘を駆け下りて行ったのに そして私も同じよと伝えたのに>
「Magdalene」という英単語は、「悔悟する女」の意味をもつのである。
MVのラストシーンでは子どもを救い出しているように見える。これが意味するところは何か。若くして命を絶った者たちか、幼い頃の彼女自身なのか。
このMVのディレクションも彼女自身が行ったそうだ。
後半を見て分かる通り、ものすごい美女なのに冒頭はギョッとするような出で立ち(というか化粧)。一貫して右目は傷ついているか、あるいは失われているような表現である。
収録アルバムのジャケット写真もコワい、コワすぎる。「目」に何か思い入れがあるのだろうか。
You may also like...