DJDD's FANTASTIC TUBE SHOW

クソDDのライト音楽ヲタが"make my day"な曲を好き放題語る

忘れえぬ木曜日【Jueves/La Oreja de Van Gogh】(2008)

3月11日。多くの日本人にとっては決して忘れえない日付であろう。

実は、海を越えたスペインでもこの日は特別な意味を持つ。

2004年3月11日の7時半ごろ、通勤時間帯の首都マドリッドを走る地下鉄内で立て続けに爆発が起きた。

同じ路線の異なる列車に仕掛けられた時限爆弾の爆発は10度におよび、191名の死者と2000名以上の負傷者を出すことになる。

2001年の9月11日にアメリカ合衆国で起きた惨事に続き、過激な宗教団体によるテロであった。

191名の死者とひとくくりにすることは簡単だが、ひとつの人生が191奪われたということである。それぞれに物語があり、愛する者がいた。

突然の悲劇から5年の歳月が過ぎ、それをすくい取ったのがスペインを代表するバンドLa Oreja de Van Goghである。

歌の中に現れる女性は、毎日同じ電車に乗る男性と恋に落ちた。

自分に自信がない彼女であったが、思いを抑えきれず、ある木曜日に意を決して彼のもとへ進んだ。

本楽曲のタイトルはずばり「木曜日」。そう、2004年3月11日の曜日である。

口ごもりながらも思わず男性の名を呼んでしまった彼女。ああ、変な女と思われただろうな、もう死んでしまいたい…

しかし、彼の口から発せられた言葉は意外なものだった。

<僕は君が誰か知らない でも君に会いたくて 毎朝この電車に乗るって決めたんだ>

二人が同じ気持ちだと分かった瞬間、"それ"は起こった。

しばしの暗闇の中、再び灯りがつく。薄れゆく意識の中、彼は彼女に<愛してる>と伝える。そして彼女は、最後の鼓動を彼に預けたーー

実はこの歌詞、犠牲者の遺品のひとつとして列車の残骸から発見された日記帳からインスピレーションを得て書かれたそうだ。

東日本大震災からちょうど10年の節目を迎えた2021年3月11日は、奇しくも木曜日であった。

自国の悲劇と同様にあの惨劇に胸を痛めてくれたスペイン人たちが、両国で失われた命に祈りを捧げてくれる声をいくつも聞いた。

愛する者を唐突に失った悲しみは、決して時が慰めてくれるというようなものではない。むしろ日を追うごとに愛しさは募ってゆくばかりではないだろうか。

それでもこの歌には、手を取り合って前を向いていくことが、残された者たちの使命だと語り掛けるような力強さがある。

Jueves

Jueves

  • La Oreja de Van Gogh
  • ポップ
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

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