「冷たくて温かい」という相矛盾する感覚を抱くときがたまにあるが、この曲にもそんな表現が当てはまるように思う。
若干20歳でデビューしたアイスランドのシンガー・ソングライター、Ásgeir(アウスゲイル)。
その若さからは想像できないほど、彼の紡ぐ音はイマドキのポップソングとは一線を画している。
シンプルなギターの音に乗せた3拍子の歌。
乾いた土、冷えた風なんかを感じるのは、やはり彼の出身地であるアイスランドの土地を思い起こすからなのだろうか。
ただ彼の繊細な声にはどこか温かみがあり、メロディと相まって厚手のマントをまとった吟遊詩人の姿が思い浮かんだ。スナフキンのようなね。
そんなイメージの交錯が「冷たくて温かい」印象を与えたのかもしれない。
サビに入ると一転、パキッとした曲調に変化する。
3拍子をキープしたまま2拍ごとにスネアドラムを入れることで、急に表裏が入れ替わるような不思議なアクセントを作っているのが特徴。
そのリズムに乗って鳥が気ままに飛び去っていくようなラストも情緒的だ。
ちなみにこの『King and Cross』、王と十字架というタイトルさながらに ものすごい歌詞世界である。
まさかティーンエイジャーの若者がこんな歌詞を書いてしまったのかと恐ろしく思っていたら、詩人である彼の父による作詞とのことで納得。
この家族の暮らしを追うだけでも一つのストーリーが生まれそうだ。