70年代生まれのDani Martínは、もともとポップ・ロック畑でエモロックに近い歌を書いてきた人である。
それが2019年、突如ラテン全開のこの楽曲。しかも何かの映画の影響をもろに受けたようなメイクで登場するのだから、ファンの間ではなかなかの衝撃だったようだ。
ロックからレゲトンへの転向も驚くべきことだが、楽器の使い方もなかなかバラエティ豊かである。
低音のホーンセクションやギターリフでヨーロピアンジャズのテイストも混ざっている。さらにはロカビリー風なギターソロが入ってきたり、実に賑やか。
で、歌詞がまた素晴らしい。
<見ろよ 俺がどれだけ完璧か ナイトガウンはドルガバだし 住み家は空港だ>
が、実際の自分は完璧とはほど遠い。
鼻は気に食わないし、顔にはシミや傷跡がある。だから人前に出すときは「編集」して、幸せな自分をプロデュースするのだ。
<嘘だ 俺の人生は嘘 作り話なのさ>
<シャキーラもルイス・ミゲルも知らねえ あのクラブに生えてる有名な植物のことなんか一つも知りゃしねえよ>
人は誰しも好かれるために、またコミュニティに居続けるために自分を偽っている。
Martín自身にもその経験があったことが、この曲を書く動機になったと明かしている。それが冒頭のピエロメイクにもつながっているのだろう。
自分の人生は、自身が作り出したもう一人の自分。
<けどそんなこと誰にもバレやしないよ>
こう結ばれるラストは何とも意味深である。
ちなみに、J-POP界隈では瑛人の「香水」(2019)でドルチェ・ガッバーナの香水が話題に。同社としては、勝手にナイトガウンやら香水やらを宣伝してもらえた謎の一年だったことだろう…
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