「古き良きアメリカ」のサウンドを再現するバンドが現れた。
こんなにノスタルジックできゅんとするソウルが、カバーでもリミックスでもなく、新曲として現代に登場するとは…実に幸運なことではなかろうか。
フロントマンを務めるDurand Jonesは米ルイジアナ州出身。ミシシッピ川沿いで育ったコテコテの「ディープ・サウス」人である。
彼がインディアナ大学在学中に声をかけたメンバーを中心にバンドを結成。取り組むのは70年代のソウルで、Durand Jones & the Indicationsというバンド名にも往時の名残を感じる。
2016年、わずか452ドル(5万円程度)の予算でデビューアルバムを作っていたときには、特にバズることなど想定していなかったという。
しかし、そちらに収録のGroovy Babe(2018)がGoogleのCMソングに採用されたことで、一挙に注目を集めるようになる。
そんなシンデレラストーリーを経て発表されたのが、2枚目のアルバムAmerican Love Call(2019)。本楽曲も収録される充実の1枚である。
<思えば遠くまで来たもんだ>というような内容。
長く続く道をあてどもなく歩いているが、その途中で仲間たちに出会い、さらに旅を続けていく…そんな状況が抽象的に描かれる。
国土の広いアメリカ合衆国では、「ロード」をテーマにした文学作品などが生まれやすい。また有名なカントリーロードを始めとして、「家路」を歌った曲は彼らの心の琴線に触れやすいようだ。
この歌では、家路を戻るのではなく家から遠く離れていく。ノスタルジックなトラックも、家を出たときに感じた期待と不安のような心情を思い出させるようだ。
曲のもつそんなムードが、故郷を離れた者たちの心に寄り添うのかもしれない。
You may also like...