スペイン・モンゴル料理という変わったジャンルのレストランで、食事中に流れてきた渋い音楽の虜になった。
スペインのシンガー・ソングライターCamilo Sesto(カミロ・セスト)はバレンシア州アルコイに生まれ、2019年、73歳の誕生日を目前にマドリッドで息を引き取った。
1960年にテレビのポップソングコンテストで優勝してからデビューしたという、正統派なスター街道を歩んできた人物。
死の直前までレコーディングやコンサートで精力的に活動しており、まさに芸に生きたといえる人生だった。
彼の8枚目のアルバムMemorias(思い出たち)に収録されたこちらは、フランシスコ・フランコの独裁政権崩壊から間もない1976年の楽曲。
アラビアンテイストが入ってくるのがスペインらしい。特徴的なジャカジャカ音は、アラビアの弦楽器カヌーン(ツィターっぽい楽器)であろうか。
時代が時代だけに、歌詞もザ・歌謡曲で素晴らしいのである。
主人公は夜明けの海を前に立ち尽くしている。風に乗って飛ぶカモメの姿に「あなた」を重ね、こう思うのだ。
「あなたはどうしているのだろうか」と。
まだ水平線に隠れたままの太陽に向かって「あなた」の名前を叫ぶが、返事がかえってくることはない。
こんなことを毎日繰り返しては、あなたは幸せなのかと問いながら涙しているというのだ。
実に湿っぽい。
フレーズごとに韻も踏んでおり、ポップ・バラードとしてこの上ない出来である。
You may also like...