英語圏の歌手にとって、クリスマスアルバムのリリースというのが1つのステータスになっているらしい。
ある程度 人気のある歌手であってもキャリアが成熟してから取り組む傾向にある。
オーストラリア出身の(元)覆面歌手SIA(シーア)もそう。
2010年ごろから、シンガーとしてもソングライターとしても高い評価を得ていた彼女。
その地位を不動にした『Chandelier』の発表が2014年で、クリスマスアルバム『Everydai Is Christmas』をリリースしたのは2017年になってからのこと。
通常クリスマスアルバムには『サンタが街にやってくる』『ジングルベル』など、おなじみの曲をカバーしたものが数曲は収録されるもの。
しかし、本作は全10曲がオリジナルという気合の入り方である。
幾度もグラミー賞に輝くアメリカのプロデューサー、Greg Kurstinとの共作。彼とは長きにわたってコラボレーションしている。
もっとも、世界でヒットするクリスマスソングというのはアメリカ発のものが多いし、アメリカ音楽を知り尽くした人物の意見を取り入れるのは極めて真っ当な戦略だろう。
かつ、SIAのソングライティングはもともとヒップホップやソウルといったビンテージなアメリカ音楽をベースとしている。
アルバムのオープニングを飾る『Santa's Coming For Us』も、リズムやコード進行はモータウンサウンド風。ハスキーでありながら力強い声で歌われるハイトーンが何とも心地よい。
一方で、使われている楽器は何ともカリブなのである。
カリブ海あたりでは、クリスマスソングも厳かな雰囲気より楽しげなものが好まれている。伝統的な音楽スタイルで奏で、ひたすら踊りまくる。
そういうパーティにもぴったりな楽曲ではなかろうか。
MVではコテコテの「古き良きアメリカ」のホームドラマを再現。ハリウッド映画でよく見かける面々ではなく、テレビドラマを中心に活動する俳優陣を迎えている。
このあたり、クリスマスアルバムのメイン購買層である「アメリカの田舎」も意識していると言えるだろう。
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