そのニュースが飛び込んできたのはもう1年も前のことになる。
スウェーデンのDJ Aviciiが、滞在先のオマーンで死去――享年28。
EDM界を牽引してきたスターの早すぎる死に世界中が衝撃を受けた。
Aviciiについては『Wake Me Up』などが代表曲とされることが多いけれど、DJDDが特に好きなのが、何だか滑稽なほどに勇ましい『Waiting For Love』。
初めて聴いたとき、ちょっとYMOっぽいと思ってしまった。
曲を推進するピアノのリズムに始まり、全体に<僕たちは決して負けない>といった力強い言葉が並ぶ。
そうして描くのは、ただひたすらに愛を待つ人間の姿。これを一週間にたとえて表現したのがこの曲最大の特徴。
<月曜日に傷つき 火曜日に投げ出した 水曜日に両腕を広げて 木曜日には愛を待っている>
<ありがたいことに今日は金曜日 炎のように燃える土曜日 なぜだか教会に行く気にならない日曜日 その時ぼくは愛を待っているだろう>
ここまでの歌が終わると一旦曲が静止し、徐々に気持ちを高ぶらせてから、ドロップ(サビ)の爆発へと至る。この流れは実にドラマティック。
このビルドアップを長くとることで余韻が生まれるため、より歌詞の含蓄が増すような気がする。
曲全体として、つらい月曜日から希望にあふれる日曜日に向けてだんだん前を向く人間を表そうとしているように読み取れるかもしれない。
しかし奥深いのは一週間が「To come around」つまりまた元に戻るという点。
人生苦あれば楽もありではないけれど、感情のピークがきた日曜日の後でまた月曜日がくるという、何ともやりきれない話になってしまう。
それを踏まえたうえでの<決して負けはしない>というメッセージにもとれるので、人によって様々な解釈の余地を残していると言えるだろう。
たかがEDMと侮れないところがAviciiたる所以。
Avicii死去の報に際しての友人たちのコメントでは、彼が非常に繊細な人間だったこと、本当はパーティなどの賑やかな場所が得意でないにもかかわらず、瞬く間にスターダムを駆け上がっていったこと、などに言及されていた。
目もくらむような賞賛とそれに比例する重圧を一身に受けていたであろう一人の若者が、本当に待っていた愛とはどんなものだったのだろう。
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