2012年7月発売、モーニング娘。50枚目のシングル。
その日いつものようにYouTubeを開くと、レコメンド欄に懐かしい名前を見た。
モーニング娘。――おお、まだ活動していたのか。
何を隠そうDDはモーニング娘。世代ど真ん中。そしてご多分に漏れず、2012年当時このグループに対する興味はすっかり薄れていた。
6期メンバーの道重さゆみ、田中れいなだけは、同い年ということもあり親近感を抱いていたものの、最新曲などほとんど分からない。
そこにこの動画がレコメンドされ、サムネイル画像に道重・田中の姿を認めたものだから、懐かしさもあってクリックしてしまった。
それが後に続く恐怖のハロプロ沼の始まりだったのだ。
とりあえずMVを見てみよう。
はじめの一小節が耳に入った瞬間、稲妻が走った。
四度の和音がシンコペーションでうごめくような始まり方。
もとよりつんく♂さんの作る楽曲は一般的なポップスの基準に照らすとかなりブッ飛んでいる。当然、J-POPでもこういう始まり方は例を見ない。
この頃Skrillexなんかを好んでよく聴いていて、ごちゃごちゃしたシンセの音に慣れ親しんでいたDDの耳にすぽっとはまってきたわけだ。
このOne・Two・Threeは6期メンバーの道重さゆみがリーダーに就任して最初に発表されたシングルだった。
この前まで極端にメディアへの露出が減っていたモーニング娘。はライブパフォーマンスを徹底的に磨く路線をとっていた(いわゆる“プラチナ期”)。
個として圧倒的なスキルを持っていたメンバーが立て続けに卒業し、道重・田中の6期に続くのが9期、そして10期というほぼ素人だらけの状態。
ここで彼女たちが打って出たのが“集団戦”、つまりEDMに乗せたフォーメーションダンスだったというわけ。
Perfumeやきゃりーぱみゅぱみゅの“ヤスタカファミリー”によってEDMがメジャーシーンに躍り出たが、モーニング娘。もこれに乗っかりつつ独自の色を加えてきたのだ。
ただし、つんく♂さんの示すEDMは、一般的なかっこいいダンスミュージックとは一線を画す。
まず、基本的なアップテンポの曲の中に大量の十六分音符がぶち込まれ、早口言葉かと思うような歌詞。
その歌詞の内容も、好きな男子とデートの約束を取り付けようとしている女の子を描いた極めて凡庸な内容。
そしてこの主人公は素直なのかツンデレなのか、ちょっと面倒くさい(つんく♂あるある)。
コレオグラフィ(振り付け)はスタンダードなヒップホップダンス。なのだけど、歌詞のリズムに合わせて急に裏でリズムをとってみたりする。
ハロー!プロジェクトに加入すると まずは徹底的にリズムを叩きこまれるというから、その実践練習も兼ねているのだろう。
トラックは申し分なく格好いい。
Aメロ・Bメロ・サビのそれぞれの部分でメロディにほとんど抑揚がない。ただ、十六分音符が激しくシンコペーションを打つのみ。
そんな無機質なメロディに合わせて、半音ずつ下降していくベースに合わせて展開してゆくコードが最高にクールなのです。
一転、サビのラストだけは「あーいーしーてー」と、一文字ずつを一小節伸ばしているのだけど、ここでイントロのリズムパターンが戻ってくる。
間奏を除けば全体的にテンションは抑えめのアレンジだが、ここは浮遊感があって効果的。
サビは最後の音、吐息交じりの「る」で収束する。ここは歌割が少ないことを自虐ネタにする道重と生田衣梨奈が担当している。
ちなみに生田は、このMVではあえて笑顔を封印したようだ。そのクールビューティーさ加減がこの楽曲の雰囲気に絶妙にマッチして、大正解だと思う。
イントロが良ければ、同じように落ち着いたトーンで締めるアウトロも良い。
ただの笑顔が可愛いだけのアイドルじゃない、新生モーニング娘。ここにあり、といった感じ。
DDはこの曲を聴いてしまったがためにハロプロの道に入ってしまった。
何が良いかと言われると困るのだが…やはり巷で言われる「ダサさ」、これに尽きるのだと思う。
前述のとおりトラックが超一級にクールなのにも拘わらず、歌詞・MVの作りが最高にダサい。
生田のようなロボット路線でいけばよかったものの、なんかキラキラしていたり回転してみたり、突然きゃぴきゃぴ笑うアップ映像が差し込まれたりする。コンセプトが謎だ。
ちなみに衣装に関しては、このOne・Two・Threeのものはまだマシな方…
この格好よさとダサさの絶妙な(極端にダサさに振れている)バランスこそがハロー!プロジェクトだと思っているのだけど、我が軍の皆さん、いかがですか?