一世を風靡した『江南スタイル』(2012)からほどなくして、今度は北欧からとんでもない曲が放り込まれていた。
典型的なEDMサウンドに乗せて登場してくるのは数々の動物たち。犬はワン、ネコはニャー…といった具合に、童話の世界そのままに鳴いている。
しかしここで、<キツネは何て鳴くのだろう>という疑問が首をもたげる。
サビではキツネの衣装に身を包んだ歌手が鳴き声(?)を絶叫する。森で激しく踊るダンサーの横では、孫に絵本を読み聞かせる老人がキツネの鳴き声の表現に苦慮している。
二番もかなり雑。
<もしフレンドリーな馬に出会ったら どうコミュニケーションをとるつもりだ モールス信号で話すのか それともホース(馬)信号で話すのか>
やがて<キツネの秘密 古の謎>という文句で始まる幻想的な高みに至り、最後にはキツネご本人のMCまで加わって曲を終える。
実にくだらない歌だが、本人たちはいたって真剣なのがシュールな笑いを誘う。一番を歌っている人はちょっと笑いそうになっているようにも見えるが。
実はこの歌手、何とノルウェーのお笑い芸人なのだ。Ylvis(イルヴィス)という兄弟コンビだそう。
ノルウェーのテレビ局で彼らの冠番組の宣伝のために制作しただけのはずなのに、バズってしまって大変なことになった。
一部の国では『What Does the Fox Say?』というタイトルで配信されている。
きちんとEDMとしての体裁をなした楽曲、お笑い芸人にしてはやたら高い歌唱力、CGや衣装にカネがかかってそうな映像など、色々とムダ使いした贅沢な逸品である。
これ、クラブでもやはりかかっていたのだろうか。テッペンも近づいた頃、謎のテンションで「アォーーーーーン!」と絶叫したら楽しそうだね。