とんでもなく生き急いだ若者の声がある。
2017年にデビューした後、2018年に大ブレイク、一気にスターダムを駆け上がったラッパーJuice WRLD。
2019年11月に1OAKで東京を沸かせたかと思いきや、翌12月に21歳の誕生日を迎えた直後、突如世を去った。
当時のHip-Hopファンの混乱は推して知るべしだが、制作陣にとっても晴天の霹靂だったことだろう。
ともあれ、すでにレコーディングが終了していた楽曲は予定通りリリースすると所属レーベルが発表。2020年の夏、Legends Never Dieと名付けられた3枚目のアルバムがローンチされた。
そのアルバムからシングルカットされたのが本楽曲。世界で最も有名な覆面プロデューサー、Marshmelloとの共作である。
ドラッグに溺れ、孤独を束縛で埋めて、破滅に向かっていくふたり。
彼女がそこから抜け出そうとした時、この曲の主人公もようやく思い当たる。
<オレらの関係を台無しにしたくない こういう愛はそう簡単に行ったり来たりするもんじゃないから>
神様に<もっとマシな男にしてくれ>と祈り続けてきた主人公にとって、彼女こそが自分を「マシ」にしてくれる存在だった。
過去に別れを告げ、新たな道を歩んでいこうという決意が、疾走感あるロックサウンドに乗せて紡がれていく。
Juice WRLDはシカゴの空港で倒れ、そのまま帰らぬ人となったが、相当量の薬物やら何やらを持ち運んでいたらしい。
飛行機移動でどうすればそんなことが可能なのだろうと考えていたら、なんとプライベートジェットだったという。
20歳にしてプライベートジェットを所有するほどに栄華を極め、かたやオーバードースであっけなく生涯を終える。
バカチンと叱られてしかるべきなのだが、このように鮮烈な生き方が若者に(悪)影響を与えることは否定できない。
しかし、この曲の歌詞には<強くなろう ふたりで長生きしよう>とある。
本人が自分の人生に満足、あるいは納得していたのか。永遠の謎であり、それを思うといくばくかの切なさも感じるのだ。
ちなみに、MVの最後に現れる666は、映画オーメン(1976)の影響で「悪魔の数字」として登場することの多いナンバー。
それが反転すると999、つまり「神」を現す数字になる…というちょっとした俗説がここで使われているらしい。
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