Panic! At The Discoは実質Brandon Urieによるソロ・プロジェクトのようになっている。
ロックバンドであったが、近年はエレクトロポップの要素が強い。
Urieは非常にキャッチーでダンサブルな「アメリカ的」な音楽を生み出すのだが、いつもどこかにフックを仕掛けてくるのでつい気になってしまう。
この曲においては、サビのコード進行がそれである。
どこへ向かうの?というようなコード進行は、半ば強引に解決する。なんとも不思議な作りだが、妙にクセになる。
そんなこの曲のタイトルは<見てよママ、オレはやってやったぜ>。
夢を持って親元を去り、無事レコード会社との契約まで至った彼を待っていたのは眩いほどの成功。
しかし悪魔の誘惑に耳を貸したが最後、快楽に溺れて破滅寸前に。やがて自らの内なる声に気付き、見事再起を果たしました!
…が、所詮全ては芸能界にとぐろを巻く大きな力によって演出されたストーリーに過ぎない。
使い捨てられた数多の「スター」たちの骸のうえに、彼もまた投げ捨てられるだけである。
MVはUrieを模したマペットを使って可愛らしく撮られているものの、表現がけっこうえげつない。
セレブリティとアルコール・ドラッグというのはもはや切っても切り離せないもの。
ちなみにUrie自身はこの手のゴシップとは無縁。バンドの元メンバーが依存症の治療を理由に脱退したという経験はある。
直接的に彼らの富や名声に群がる存在はもちろんだが、それ以上に不気味なのが「大きな力」である。
これは必ずしも芸能界を牛耳る者たちだけでなく、パフォーマンスの受け手である大衆も含まれるだろう。
SNS等の発達で芸能人に大衆が近づきすぎたことで、彼らへの期待やバッシングはより強大な力となってのしかかる。
ひとたびアメリカンドリームを掴めば全てが手に入るアメリカという国においては、そのプレッシャーは一層のものであろう。
この歌の中で彼は、自らを<歌を売る売春婦>、そして<あっせん業者はレコード会社>とまで言い切っている。
悪にあふれたこの場所で、悪に祈りをささげよう。そうやって最も偉大な人物になる…
それを受けての<母ちゃん、やってやったぜ>とは、何とも痛烈である。
よくぞまぁ「レコード会社」がこの内容でOKを出したなと感心してしまう。
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