Saad Lamjarredはモロッコ出身のシンガー・ソングライター。アラブのオーディション番組Super Starをきっかけに名声を広めた。
彼は声楽家とコメディ女優の間に生まれたサラブレッドで、ボーカル・器楽・ダンスの専門教育も受けている。
モロッコというのは北アフリカにありながら、アフリカ人の土地というよりは中東の文化が色濃い地。主たる宗教もイスラム教である。
というわけで、彼が主に手掛けるのはアラブのポップソング。
この曲のも中東の伝統舞踊のリズムがベースとなっている。キックベースのパターンが実に不思議で、西洋音楽の枠組みには当てはまらないものだ。
彼のシングルの中では最大のヒット曲で、YouTube上で最も再生回数の多いアラビア語の動画となった。
広くアラブ圏外のダンスミュージック好きにも、彼の存在が知れわたったことが分かる。
歌詞が分からないにもかかわらず世界中で聴かれていることから「次代のPsy」などとも称されているらしい。それが名誉なのかは何とも言えないけれど。
彼は一時アメリカ合衆国で暮らしていたこともあり、その文化も吸収しているようだ。ビートを強めにきかせ、世界的流行だったEDMを取り入れている感がある。
この曲のMVに至ってはまんまカリフォルニア辺りで撮ったと言われても違和感がない。
カラフルな衣装たヒップホップダンスにもLA感がにじむが、生地のパターンはしっかり中東で非常に楽しい。
歌詞は全編アラビア語。タイトルは「先生」という意味らしいが。英題は「The Boss」となっている。英訳された歌詞を読んでもあまり要領を得ない。
3という数字が入っている。アラビア語を無理やりローマ字に書き換えたときに、3や7などを使う場合があるらしい。
ちなみに彼は相当なお騒がせで、たびたびの性的暴行により世界各国で逮捕されている。
それでも新曲がアラブの音楽賞を受賞したりなどしていて、中東辺りに根強く残る男尊女卑観を浮き彫りにする存在ともいえるだろう。
さすがに2018年あたりからは世間の風当たりも強くなり、活動が制限されている様子。
才能ある人物であることは間違いなく、もったいないと言えばそれまでだが…
芸能界と犯罪からの更生というのは、どの地にあっても難しい問題であろう。
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