アレンジとコリオグラフィーがアンティークな時計を演出する。
甘いメロディによる切ないラブソングだが、サビの作りは非常に洋楽的なEDMである。
振りも時計をイメージしたものとなっており、針はもちろんバネやからくり人形を思わせる場面もあったりして、ファンタジーな世界感が満開。
骨董品店に入ったら、時の妖精たちが舞う世界にひととき迷い込んでしまった…みたいな素敵な雰囲気がある。
個人的には、2番サビからそのままなだれ込む間奏部分がツボ。
シャープなシンセサウンドのうえを鐘の音が響き、一瞬の静止の間に振り子時計がカチコチと時を刻む。ここで時計の映像をかぶせてくるあたり、ハロプロらしからぬセンスを感じる(褒めている)。
大サビ前にも時計は時を刻み続け、その音がラストに向かってビルドアップするのも面白い。
時がテーマの楽曲、そしてサビや間奏のアレンジから、どこかZeddのStay(2017)を彷彿させるものがある。
ところで、間奏前の歌詞は「午前0時」。12時の鐘といえばKing & Princeのシンデレラガール(2018)である。
あちらでは、彼女は「わりと門限厳しい」などと言いつつさっと雑踏に消えてしまう。そして彼は12時の鐘を聞きながら彼女に想いを馳せるわけだ。
一方、こちらはどうか。プレゼントした腕時計を出してほしくて何度も<イマナンジ?>と尋ねる。
そして門限が近づくと、引き留めてほしくてやっぱり何度も<イマナンジ?>と聞いてしまう。
紳士で鈍感な彼はこちらの気持ちに気づかずにさっと帰してくれる。<優しい人だから>と自分を納得させようとするも、なんとなくモヤモヤしながら12時の鐘を聞いている。
この2つの楽曲のカップルは真逆のようでいて、意外と同じシチュエーションを男目線と女目線で語っているように想像してしまう。
恐らくまだ付き合って間もない初々しい2人、相手を思いやるあまりにあと一言がいえない…そんなキュン感を味わわせてくれる佳作である。
冒頭の長いソロを担当し本MVのサムネ画像にもなっている小片リサは、ちょっとしたいざこざがきっかけで2020年末にグループを脱退した。
小片さんはある意味、つばきファクトリーというハコのディレクションを決定づける存在であったためこの穴は非常に大きい。
が、本人にもグループにもどうか引き続きがんばってほしい…と勝手ながら思う。
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