子どもと思しき声でひたすらに繰り返されるLa La LaとNa Na Na…の奇妙なリズム、そして不気味とも言えるMVの世界観。
英国人シンガーSam Smithの名を一躍世に知らしめた、その名も『La La La』という楽曲である。
このMVの舞台となっているのは南米・ボリビア多民族国。
主人公の少年は恐らく先住民(インディヘナ)の一族だろう。ペルーやボリビアなど、アンデス一帯の先住民の風貌はどこかアジア人と近い。
曲については一度聴いたら忘れられないインパクトがある。ここではMVの背景について少しだけ言及してみたい。
以下、この歌のベースとなる歌詞は<あんたの話が聞こえないよう 僕は子供のように耳を塞いでLa La Laと歌う>といった内容であることを念頭に置いておいてほしい。
多様な解釈の余地がある本MVは、実は『オズの魔法使い』をベースにしている。
少年はこの世界に迷い込んできた存在で、仲間たちと出会いながら最終的には帰るべき場所に帰っていくというプロット。
この舞台をボリビアというエキゾチックな場所に移すことで、ストーリーがぐんと多義的になる。
とりわけ印象的なのはラストシーンだろう。ここはポトシという世界遺産の町にある現役の鉱山で、セロ・リコという。今も多くの貧困層が働いており、その労働環境の劣悪さから『負の世界遺産』と呼ばれるほど。
この中に鎮座する不気味な像は『エル・ティオ』と呼ばれ、鉱山の守り神として祀られている。
守り神であると同時に悪魔と呼ばれることもあり、タバコやコカの葉、酒といった供物がなければ暴れ出し、山を崩落させる存在。
ここで触れておきたいのが、ボリビアの伝承。このエル・ティオの声を聞くと呪われるという言い伝え、そして自らの声で人々を癒す聾の子どもの伝説があるらしい。
少年と仲間は神のいる山を目指すが、最終目的地には耳の聞こえない少年しか入れない。
自身が虐げられるシーンと仲間を救うシーン、ラストに荒ぶる神を鎮めるシーン。少年が歌う「La La La」の意味は、混沌としている。
この旅の途中で登場するのは、死ぬまでに一度は行きたい絶景などと紹介され、雨季には鏡張りの風景を求めて日本人が押し寄せるというウユニ塩湖。
だがDJDDにとってはこのMVに写るような、乾ききった塩田が描く美しい六角形の方が魅力的だ。
ウユニ近郊の観光スポット『電車の墓』、そして首都ラパスも出てくるので、ちょっとした紀行ムービーとしても楽しめる。まぁ、内容はかなりヘビーだけど。
参考URL:
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