場末のバーを舞台に繰り広げられるブルージーなカントリー・ミュージック。
Luke Combsはノースカロライナ州生まれのシンガー・ソングライター。
ナッシュビルに移って音楽活動を始めたことからも分かるように、今時貴重なコテコテのカントリーミュージシャンである。
いかにもアメリカン体形の兄ちゃんだなと思ってみていたら、90年生まれでかなりの若手であった。
これまでに2枚のアルバムを発表しており、本楽曲は2枚目のWhat You See Is What You Get (2019)に収録。
このアルバムは米国のカントリーチャートのみならず、総合チャートでも1位を獲得している。
もはや白人の国ではなくなったアメリカにおいても、いまだにカントリーミュージックへの熱は冷めていない。
そしてこの曲がまた、アメリカ人の琴線に触れまくりであろうビール礼賛ソングである。
<オオクチバスに釣り糸を切られたこともある 綺麗な女の子たちにサヨナラを告げられたこともある>
<トラックは壊れるわ 犬には逃げられるわ 政治家は嘘をつくし 上司にはクビにされた>
いかにもアメリカの田舎でさえない生活を送るおっちゃんの愚痴のような歌詞が続く。
自分のことをがっかりさせない者なんてほとんどいない。そんな世の中で決して裏切ることのないものは、キンキンに冷えた瓶ビールだ…と続く。
このビールの表現が面白くて、longneck iced cold beerと歌っている。
確かにジョッキに入った生ビールを好むのは日本人に多く、アメリカ人などはたいてい首の長い(=longneck)瓶ビールをラッパ飲みしているイメージ。
iced coldといわざわざ重ねているのも、どんだけ冷やすんだという感じである。
結びに来るのはこのような歌詞。
<ネオンが見せる夢も バーも ギターも 俺に構やしない でもビールは俺の心を裏切りはしないのさ>
普通なら「ギターとビールさえあれば」という歌になりそうなところ、この人物にとっては歌すらも慰めにならないようだ。
ひなびたバーで日銭稼ぎのライブをこなすミュージシャンの悲哀を感じさせるようなMVとともに、どことなく滑稽さをも感じさせる主張ではなかろうか。
コメント欄には以下のようなものも見られる。
「ビールは決して俺を裏切らなかった。だが肝臓を壊した」
どんなに辛いことがあっても、飲み過ぎ厳禁である。
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