コロンビアにPiso 21というグループがある。いわゆる「ボーイズ・バンド」の体裁ではあるが、はっきり「アイドル」とも言い切れない。
近年よくあるオーディション番組から誕生したわけでなく、ミュージシャン同士が集って結成したグループだからだ。作詞作曲も自ら手掛けている。
そのPiso 21から2019年に脱退したのがLlaneである。スペイン語読みでは「ジャネ」となるが、英語圏では「ジェーン」とも呼ばれているらしい。
率直に言って、Llaneが抜けたことはグループにとって痛手だっただろう。彼がソングライティング・歌唱力、そしてルックスともにグループ1と言われ、人気を牽引してきたからである。
しかし古今東西、集団で頭ひとつ抜けた人物が独立して新しい道を進むのはよくあること。
DJDDがFifth Harmonyを脱退した後にCamila Cabelloを知ったように、Llaneを知ったのも脱退後である。
両名とも、これまでグループの存在を知らなかった層にまでその名を知らしめるほどの成功をおさめたのだから、残された者は複雑な気分であろう。
もっとも、Camilaが半ばケンカ別れのような脱退劇を演じ、後にグループ自体が活動休止に至ったのに対し、Llaneは12年間という長い歳月をグループと共に過ごしている。
脱退までのプロセスも円満だったようで、グループも新メンバーを迎えて着実に新たな道を歩んでいる。
前置きが長くなったが、このComo AntesはLlane名義シングルの第四弾。
Piso 21時代の楽曲はスムースなレゲトンを中心とするものだったが、彼は本来ロマンチストなんじゃなかろうか。ソロシンガーとして初めての夏曲に選んだのが、この「あまあま」ソングなのだから。
「君の瞳に恋してる」をとろけるようなラテンバラードに仕立てた感じ。独特のハスキーボイスでこれを歌うとは、自分の魅力を分かっているとしか思えない。
<今夜君を招いたのは 大事な話があるからだ>
<もう何年も誰も愛していない 思い出すのは初めて君と会った日のことばかり>
<前みたいに恋に落ちたい ただ君を前のように愛したいだけなのさ>
なんといってもアレンジが秀逸である。弱音器を付けたトランペットが控えめに主張し、パーカッションは身体を自然なステップへと導く。
南国の風が吹く、オープンエアの賑やかなバー。ドレスアップした男女がカクテルを傾けながら囁き合うバックでは、生バンドで歌われるこの曲が夜を彩る―そんなシーンを想像すると、たまらん。
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