Jess Glynne(ジェス・グリン)は英ロンドン出身のシンガー・ソングライター。
ミュージシャンとしてデビュー後間もなく、同じくイギリス出身のバンドClean Banditの『Rather Be』(2014)に参加したことでグラミー賞を受賞、一気にスターダムを駆け上った。
彼女の持ち味は、力強くも絶妙に翳りのある、黒人的とも言える声である。
EDMに求められる伸びやかな声も、アフロテイストの揺らぐようなボーカルも、自在に操る。
3枚目のシングルとして発表された『Hold My Hand』はダンサブルなアップ・チューン。
「あなたが私の手を握ってくれたなら孤独にも打ち勝てる」という思いを、どこまでもまっすぐなボーカルで高らかに歌い上げる。
<いとしい人 私の手を握って><これ以上独りで歩きたくないから>
というサビはラブソングのようにも聞こえるが、個人的にはより深い意味を包含していると考えている。
曲全体を通して特徴的なのが、「fall」(落ちる)という歌詞が頻繁に登場する点。
<人混みの中であなたの顔が見えない 私を抱きしめて 全てうまくいくと言って>
こんな歌詞で始まるが、ここでは自分自身を見失っているような状態が想像できる。
そしてBメロで<たとえ骨が砕かれようとも 私は落ちない>とくる。
どこに落ちるのかは明言されないが、この曲のテーマの一つが「孤独への恐れ」とすると、孤独の深淵へと落ちていく状況にあてはめられるだろう。
最後はこう結ばれる。
<もう準備はできてる あなたの全てが必要なの だからいとしい人 私の手を握っていて>
ニュースでは連日、何かに「堕ちた」人物の逮捕劇、あるいは訃報が流れてくる。
その人の手を握ってくれる存在がいれば、あるいはこんなことにはならなかったのかもしれない…と、そういう知らせを見るにつけ考えてしまう。
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