手のひらに収まる発明は、文字通り世界を一変させた。
待ちゆく人皆、視線はスマートフォンの小さな画面にくぎ付け…友人や恋人と一緒の時さえも、である。
目の前に話すべき人物がいるにもかかわらず、インターネットで繋がれた誰かとのコミュニケーションに余念がない。そのコミュニケーションは、双方向のものであるかどうかすら定かではないのだ。
中にはDJDDのように、そういう人たちを観察して楽しんでいるような性悪な人間も混じっているかもしれないけれど。
元来、言葉によらないコミュニケーションが得意な日本人であれば、それでも問題ないのかもしれない。
が、対話を何より重視する欧米人ですらそうなってしまったのだから、この技術革新の功罪は奥深い。
そんな世の中の光景に疑問を投げかけるようなMVである。
MVの主人公の家族は、まるで人形のように画面から目をそらさない。夜の街に飛び出して、人々からデバイスを奪い取る。
この非行少年たちは、ある種義勇団のようなものか。
一瞬のうちにスマホを奪われた乗客たち。最初こそ憤っていたものの、やがてそこからコミュニケーションが生まれる。無表情だった人々の顔に微笑みが宿るのである。
少年の行為は罪であろう。しかし今、他に方法があるのか。
こういうテーマを思いっきりEDMでやってみせるところが皮肉というか…かえって説得力が増す。
英国のトラックメイカーNaughty Boyが、同じく英国のシンガー・ソングライターCalum Scottを迎えて制作した、スタイリッシュなダンスナンバーである。
ところで、undoとは「取り消し」のことである。そして歌詞は、単純に「スマホばっか見てちゃだめよ」というメッセージではない。
<あのことは取り消させてくれ>、つまり関係をやり直させてほしいと懇願する内容である。
人生においては、コンピューターのように「戻る」ボタンを押すことは不可能なのだ。
なお、Calum Scottは自身の作品ではクラシカルなアレンジがほとんどで、リズムも極力シンプルにして物語るように歌う。
そんな彼がゴリゴリのEDMを歌っているというのが不思議である。
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